小説2 梅雨らしい梅雨
今年の梅雨はとても梅雨らしい。もうずっとお日様を見ていない。
朝目覚めても、冬の朝を思い出し懐かしさが込み上げる。どんよりとした室内、まるで水の中に住む生き物のように「寒い、寒い」と言いながら温かい珈琲を淹れる。
本当に冬みたい。こんな日は針を落としてレコードをかける。サイモン&ガーファンクル、キャロルキング、レイチャールズ・・
音楽マニア、私のトーチャンである「マスターの時代に生まれればよかったのにね」と思う奇妙な趣味を持つ今の犬っころについて行ったレコード屋で少しずつ買った、
一枚500円のLP。現在週休6日である私はそんな風に毎日を過ごしている。今日のお出かけは歯医者とスーパー、この前下手な美容師にジャキジャキにされた髪を
思い切ってショートヘアにするため美容室。ソファに案内されて待っていたらその美容師が現れたのだった。「またコイツかよ!」
久しぶりに息子が訪ねてきたので息子の好きな茶豆を買って来たら全部食べられた。子供の頃から変わっていない。
茶豆が好きな所も、全部食べてしまう所も。
こんなに寒いのにタオルケット一枚で寝ていた息子に「寒くないんかい」と言って、私のフカフカの羽根布団と毛布をかけてあげたら
じーさんのように呻いて、その後ニコニコと笑った。